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木根尚登



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木根尚登

高円寺を紡ぐ

作詞:木根尚登・藤井徹貫
作曲:木根尚登

両手ですくった山もりの砂が、
いつの間にか 指の隙間からこぼれていた。
気がつくとあの頃のあなたより大人になっていた。

足もとに広がる海。はるかまで続く波。また波。
あなたの声が聴こえる。励まされ、叱られ突き放された唄が聴こえる。
あなたみたいに生きてみたかったけど
どうやら僕は僕なりにしか生きられないらしい。

あなたに会ってからの僕が
手に入れたものを数えたら切りがない。
あなたに会ってからの僕が、
手ばなしたものを数えても切りがない。

目に前に広がる空。はるか彼方のバベルの塔。
思い出す夏の日。あれは夕立のあと。頑固そうな初老の男一人。
よれよれの開襟シャツ。すけているランニング。
手には、新聞でくるんだ、小さな花。
逝ってしまったつれあいに会いに行くのか。
そばにいる時には、云えなかった「愛してる」と「ありがとう」。
今なら何度も何度も声にできるんだろう。

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あなたに会ってからの僕が
手に入れたものを数えたら切りがない。
あなたに会ってからの僕が、
手ばなしたものを数えても切りがない。

目の前を横切る風。知らず知らず唄っているまだ誰も知らないメロディ。
僕だけの唄くちずさみながらあなたの面影を訪ねてみたい。
サビ止めのペンキを塗った鉄の階段。
カンカン カンカンと音を立てて登るんだ。
空へ 空へと近づくんだ。
カンカン カンカンと駆け登るんだ
すると、階段の途中 長い髪のあなたが坐ってる。
あなたは高円寺の高い空をながめながら云うんだ。
「街を行く人みんな自分より幸せに見えるのは何故?」

あなたに会ってからの僕が
手に入れたものを数えたら切りがない。
あなたに会ってからの僕が、
手ばなしたものを数えても切りがない。

あなたに会ってからの僕が…
あなたに会ってからの僕が…