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荒木一郎



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荒木一郎

6月

6月のあの日空梅雨だった
空はネズミ色快晴だった
下島君と電車に乗って
新宿辺りに旅に出たのさ
人と人との花火のあとを
髭モジャのお爺さんがかたづけていた
あの道の果に何が有るのか
髭モジャのお爺さんの髭があるのか

6月のあの日猫が死んでいた
明治通りの脇に捨てられていたんだ
子供の猫が舗道の隅で
乗車拒否しているタクシーをみていたんだ
下島君の親戚だけが
死んだ猫を見て涙を流し
荒川の先の埼玉県の名も無く清い河にながしてやった
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6月のあの日青い浜辺で
遥か遠くの夕焼けを見て
下島君の妹さんが
僕を愛してると打ちあけたんだ
下島君の妹さんは
いつか来るか解らぬ戦いだから
二人で一緒に手に手を取って創価学会に入ろうと言った

6月の終わり静かになった
幾つ幾つもの思い出だけが
何んにも言わず語る事無く心のどこかに忘れ去られた
忘れ去られた 忘れ去られた