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槇原敬之



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槇原敬之

歇業(店じまい)

撃ち合う兵士の流れ弾に
息子と同じくらいの
子供が倒れていくのを
たった今ニュースで見た
その兵士が持っていた
銃に見覚えがあった
それが自分の作ったものと
気づいて血の気が引いた

サッカーの話の途中で
眠ってしまった天使に
触れようとした手を引いた
悪魔の手のように見えて

震えてとまらない両手を
じっと見つめる
誰かの命奪うために
この手はあるんじゃない
やっとの思いで組んだ手を
額に当てて彼は祈る
「あぁ、神様どうか
彼を助けてください」

一人がやめたぐらいで
なくなるわけではないし
生きていくため仕方ないと
そういって今まで来た
銃を一つ作ればまた
銃口が向けられる者が増える
生きていくために仕方ないと
誰かの命を奪っていた
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眠る息子の顔を見た
自分に今出来る事を
自分が今するべき事を
落ち着いてよく考えるんだ

まだ震える両手を
もう一度見つめる
誰かの命奪うために
この手はあるんじゃない
誰かを抱くため
誰かの幸せを祈るため そして
店をたたむために
この手はあると気付いた

そのときテレビはベッドで
包帯を巻かれたあの子を映す
誰かの命が救われることで
自分の命が救われる

まだ震える両手を
もう一度見つめる
誰かの命奪うために
この手はあるんじゃない
誰かを抱くため誰かの幸せを
祈るためにこの手はあると
忘れずに生きていくために
「あぁ、神様
私は店をたたみます」